米津玄師さんの11thシングル「Pale Blue」に収録されたカップリング曲「死神」のMVが公開されました。
古典落語の演目をモチーフとした本作品は2021年6月24日22:13にYouTube公開されましたが、その公開時刻にはタロットカードの大アルカナ22枚の13番目のカードが「死神」という暗示がなされています。
MVや歌詞やセリフも謎や仕掛けに溢れているので、考察してみましょう。
米津玄師さんの死神のMV(映像)・歌詞・セリフの意味とは?
MVを観て最も印象に残るセリフ「アジャラカモクレン テケレッツのパー」。
何語・・?と感じるのですが、これは古典落語「死神」に出てくる死神を追い払う呪文です。
「アジャラカモクレン◯◯◯テケレッツのパー」と唱えると、病人の足元に佇む死神を追い払うことができます。
◯◯◯の部分は落語家ごとに工夫され、その折々の時事ネタを盛り込んだりするそう。
「死神」のストーリーを知っていないと、MVを観ても意味がわからないので簡単にあらすじを書くと、
- 借金まみれで心中しようとする男の前に死神が現れる。
- 死神は上記の呪文を教え、医者を始めるといいと言う。ただし呪文を使っていいのは死神が足元にいるときだけ。「枕元にいる死神の邪魔を決してしてはならない。」
- 名医となった男は金に飽かして豪遊するようになる。そんな時、豪商から声がかかる。
- 豪商の枕元にいる死神。男は豪商の布団を180度回して、死神が足元に来たところで呪文を唱えると死神は消え、大金を手にする。
- 呪文を教えた死神が男の前に再び現れ、男を人間の寿命を示す蝋燭の並ぶ場所に連れて行く。
- 男の蝋燭は既に風前の灯火。約束を破った男に激怒した死神が、豪商の寿命と男の寿命を取り替えてしまったようだ。
- 必死で命乞いする男に死神は新しい蝋燭を取り出して、火が消えるまでに蝋燭を移し替えられたならば助かると伝える。
- この後の展開には複数のパターンがあるが、男が助かる結末は存在しない。
このストーリーを頭においた上でMVと歌詞を見ていきます。
- 冒頭、スーツ姿の人物の足元が映し出されます。
- 場面転換して「新宿末廣亭」。右手には噺家米津玄師の高座名「幻師」の名があります。
- 手前じゃ所在ない=「手前(お前)には所在ない(何もすることがないだろう)」と自身に問う死にたい男、あるいは「手前(枕元)にいられては何もできない」と嘆く男、はたまた「手前(足元)にいるときは何もしてはならない」と教える死神。いずれにせよ、歌詞冒頭は死神が男に呪文を教える場面だと推測できます。
- このシーンでMVは落語家玄師を映し出しています。なので、落語家=男だと思われます。
- じゃらくれたタコ、与太吹き、悪銭抱え=死神視点だと思われます。約束を破ったじゃらくれた(ふざけた)男は与太吹き(嘘つき)で不法に手にしたカネ(悪銭)で遊び回ります。
- このシーンで客席にいる5人の玄師が映し出されます。おそらくは5人全員呪文で追い払われる死神です。また、落語家玄師(男)が悪そうな顔で客席(死神)に向けて笑いかけています。さらに呪文を唱えながらウザい感じで2つ柏手を打つと、客席の死神が動きだして退場していきます。
- 責め苦の果てに覗ける、俺らの仲間入り=7人目のスーツ姿玄師が出てきます。男に呪文を教えた死神でしょう。激怒して、男を苦しませた上で死神の仲間入りさせようと、男のもとに向かうシーンだと窺い知れます。落語「死神」の結末には、死んだ男が死神に生まれ変わって自分がされたように人間に呪文を教える、というパターンが存在します。
- プリーズヘルプミー、火が消える、面白くなるところだった=スーツ姿玄師が落語家玄師に迫ります。最期、落語家玄師の命の灯火が吹き消されて終幕します。人生が面白くなるところだったのに、顔が白く(面白く)なって死ぬところで、死神に生まれ変わるのでしょうか。
- 歌詞の出典は「Pale Blue」より「死神」(作詞・作曲:米津玄師)
こうして見ていくと、落語の世界に新たな表現が加えられたようで痛快です。
また、2番の歌詞は1番と同じストーリーを死神視点で言い換えたものになっています。ラスト部分の「おしまいのフレグランス」なんてとても滑稽ですよね。
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おわりに
米津玄師さんの「死神」のMV・歌詞・セリフの意味や解釈について考察してみました。
ストーリー自体も面白いのですが、歌詞の言い回しが秀逸で聞いててとても面白いです。
あとは、米津さんの首の動きだけで表現する演技が改めてスゴイなーと感じました。