不滅のあなたへ 守護団で受け継がれる愛(ハヤセ・カハク・ミズハ)

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「不滅のあなたへ」のなかでフシを守る存在として登場する守護団。

守護団創設者であるハヤセの継承者達はカタチは違えど、取り憑かれたようにフシを愛していきます。

偏愛とも純愛ともとれるその愛のカタチは、ストーリーの重要なテーマの一つです。

今回は守護団歴代のなかで連綿と受け継がれる愛について考察・感想を述べてみたいと思います。

(※原作コミック15巻までのネタバレを含みますのでお気になさらない方のみお進みください。また勘違いや飛躍的解釈、独自の解釈もあると思いますがどうぞ大目に見てやってください。)

 

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目次

ハヤセ(守護団創設者)の愛

ハヤセはオニグマによって死んだはずのフシが復活する様をみて、その不死性に神の御業を見出す。

はじめはヤノメにとって必要な人物だとして歓待するが、牢に入れて我がモノとしようとする。

脱獄後、マーチやパロナがフシを独占しているとして嫉妬にも似た感情に駆られ、マーチとパロナを殺めてしまう。

最初はヤノメの一族のためだったのかもしれないが、はやくからその思いは利己的な愛へと変貌を遂げた。

 

オニグマに変化したフシによって大怪我を負わされてから数年の歳月の末、ジャナンダ島にてフシと再会し、フシを手に入れようとする。

そんな折、ノッカーの襲撃からフシを守ろうとして散ってしまったウーロイ・ミア・ウーパ。

 

トナリが彼らに手を出せずにいると、フシは俺がやると言って前に進み出る。

しかし、トナリを人質にとり、ウーロイ・ミア・ウーパを壊す役目は私が引き受けると名乗り出るハヤセ。

あなたには美しい存在であってほしい」と言う彼女。

 

トナリが決死の覚悟で、ウーロイ・ミア・ウーパの尊厳を守ろうと飛び降りたところで、間一髪助け出したフシ。

トナリと別れ、捕縛したハヤセと2人ボートで沖へ出ると、ハヤセは「あなたを愛しています」と告白する。

フシは愛を知らないから愛を教えてあげると、それが敵わないなら私を殺してあなたの一部にしてくださいと願う彼女。

だが、マーチやパロナを殺し、トナリにまで手をかけようとしたハヤセに「あんたのことは嫌いだ」と一言言い放ち、海上に置き去りにする。

そして、ジャナンダ島にて左腕に寄生されて追い出したノッカーに、再度寄生されることとなる。

 

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彼女の愛情は、酷く利己的な愛情だと感じる。

フシを自分のものにしたい、無理ならフシの一部になりたい。

そのためならフシの周りの人たちを傷つけても構わない。

なぜなら悪いのはフシに近づこうとする奴らのほうだから。

 

だがその強い愛情がノッカーとの共生を可能にし、世代を超えてフシを守ろう(自分のものにしよう)とする守護団の存在へと繋がっていく。

これほどまでに強い愛情は他にないのではないだろうか。

ヒサメ(ハヤセの初代継承者)の愛

ジャナンダ島を出て40年以上、人との接触を絶ってきたフシ。

そこにハヤセの孫だと名乗る9歳の少女ヒサメが現れる。

フシに抱きつくヒサメ。フシと会ったらこうしろと教わったのだという。

ヒサメにはハヤセのファイが転生していて、かつ左腕にはハヤセのノッカーが住み着いていた。

 

その後、ヒサメと行動をともにするなかで、大人になったトナリと再会するも、ヒサメのノッカーに重傷を負わされてしまう。

トナリの死後、フシは森で痛々しい姿のヒサメを発見する。

左腕のノッカーを切り取ろうとするフシ。だがヒサメはそれを拒否し、フシもそれを許した。

そしてもう二度とフシと会わないことをヒサメは宣言する。

 

ヒサメは最後の望みに一つ告げる。「私はあなたとの子供が欲しいです

それがハヤセの願いであり、自分の願いでもあるのだと。

幼いヒサメは一晩をともにすることで子供ができると勘違いしており、フシもよくわからないまま夜をともに過ごした。

その後、ヒサメは守護団に引き取られていった。

 

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ハヤセの生まれ変わりだというヒサメ。

器によって自分を自分たらしめる要素は変わっていくため、ハヤセと全く同じ愛情をもっているわけではなさそうだ。

さらにノッカーが体内に住み着いていることから、いわば体内にファイが2つある状態。

おそらく普段はハヤセのファイが優勢だが、トナリを攻撃したときのようにノッカーのファイが優勢なときがあるのだろう。

 

フシの態度もハヤセに向けるそれとは大きく異なりどこか同情的。

何も知らない子どもが、転生により教育により押しつけられたフシへのそれを、果たして愛情と呼べるのだろうか。

しかし、ヒサメのフシとともに過ごせた日々は幸せそうだった。それが全てなのかもしれない。

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カハク(ハヤセの6代継承者)の愛

5代目までの継承者は代々女性で、毎度フシに纏わりつこうとしてきた。

しかし、フシがパロナの姿をとると、残念そうに帰っていった。

 

6代目継承者として現れたカハクは初の男性。

カハクの母が女子を産む前に亡くなったそうで、フシへ恋情を抱いていない様子。

しかし、フシがパロナの姿になったときに、その姿に惚れてしまい、以後フシという存在そのものを愛するようになる。

だが、フシのなかのパロナが強い拒絶反応をとり、ハヤセの手でパロナが殺害された真実を知ると、カハクは距離を置くようになる。

 

その後、カハクと行動をともにし、カハクの態度をみるなかで、フシはカハクのことを必要な仲間だと思うようになる。

 

だが、レンリル攻防戦のなかで、カハクは不安定な状態に陥る。

根を広げ摩耗していくフシを見て、フシの人間性を守りたいと願うカハク

その想いをノッカーに利用されたのか、仲間達を次々と殺めてしまい、ボロボロになったフシの「楽になりたい」の一言から全ての器を奪い去ってしまう。

 

復活したマーチにより我に返ったカハクは、贖罪のため単身ノッカーを追う。

再びノッカーをその身に宿したカハクは「私はもう戻りません」と告げ、フシを悪魔扱いするベネット教本山を葬り去ると同時に自害する。

彼の今際の一言は「愛してます、フシ」だった。

 

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フシの神秘性に心奪われたハヤセ、よくわからないままにフシを愛したヒサメと較べると、

男性ということもあってか等身大のフシを愛したようにみえるカハク。

 

フシが人間的に大きく成長してからの出会いということもあるだろうが、フシの人間的な面に強く惹かれたようだった。

フシへの純粋な愛情は、身を引くことでフシの幸せを願い、長年寄り添ったノッカーを断ち切るほどの強いものだった。

守護団のなかでは、最もフシを慮った無償の愛と呼べるものかもしれない。

ミズハ(ハヤセの18代継承者)の愛

フシが世界と繋がり、数百年の時が過ぎた。

現代で学生として生きるミズハとフシは邂逅する。

 

フシが望み実現した平和な時代。だがミズハは自分を取り巻く環境に不満を持っていた。

自分を縛ろうとする母親、完璧でない友人。窮屈で仕方ない日常で、自分が完璧に近づくには。

 

そんななか微細に進化したノッカーが世界中に蔓延っていることをフシは知る。

ノッカーの仕業か、記憶が途切れ途切れになるミズハは母親を刺殺してしまった。

身を隠すミズハ。

そこに現れたフシは「なにか君にしてあげられることはないか?」と問う。

「私と友達になって」と言うミズハ。

 

このときからミズハはフシに依存していく。

フシに乱暴を働いたり、フシに近づく女子には容赦しない。

そしてフシに「愛を教えてあげる」と告げる。

 

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ミズハのフシへの愛情は依存的に感じる。

自分が母から行動を制限されてきたためか、フシのことをコントロールして支配したがる。

 

そしてカハクが死の間際に切り離したノッカーの存在。

カハクとともに死んだとみる向きもあるが、生きていて進化の大本になったように思えてならない。

守護団とともに長く過ごしたノッカーだからこそ、人間との共生を選んだのではないだろうか。

 

そしてフシはカハクへの仲間意識からか、平和な時代で幸せに過ごしてほしいという思いからか、ミズハに優しく接する。

しかし、フシは永遠を生きる存在として、一時の愛情を持ったとしてそれが薄れていくであろうことを空虚だと感じ、ミズハの想いから顔を背ける。

そんなフシに対して泣いて縋り「愛を教えてほしいと言って」と迫る。

 

ミズハの愛情はハヤセとは違えど利己的で自分本位だと感じる。

けれども、フシに愛を知らしめるのはミズハの役割になるような気がする。

おわりに

「不滅のあなたへ」で守護団のなかで受け継がれていくフシへの愛情について考察と感想を述べてみました。

出会った時期とフシの成長、左手のノッカーの存在等など、様々な要素が相まって、一つとして同じでない愛のカタチが描かれていると感じます。

フシの対応が世代を経るごとに徐々に軟化していくのも面白いところで、身を引くのか貫き通すのか、そういったところも見物だと思います。

 

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